MENU

大阪エヴェッサ

OSAKA
EVESSA

MENU
HOME > 2020-21・2021-22初のCS進出を果たした2020-21、故障者続発に翻弄された2021-22
 

2020-21・2021-22
初のCS進出を果たした2020-21、故障者続発に翻弄された2021-22

前季にチャンピオンシップが消滅した悔しさを晴らすべく挑んだ2020-21

前季はチャンピオンシップ(CS)出場圏内につけながら、コロナ禍の拡大によってシーズンが打ち切りになった。2020-21シーズンは、ポストシーズンが開催されなかった悔しさを晴らすべく臨んだ。

天日謙作ヘッドコーチ(HC)が前季に続いてタクトを執り、選手は伊藤達哉、中村浩陸、橋本拓哉、合田怜、アイラ・ブラウン、ジョシュ・ハレルソンと契約を継続。新たな日本人選手は、ともに日本国籍を持つエリエット・ドンリー、駒水大雅ジャック、藤枝明誠高を卒業後にNBAを目指してアメリカの大学に進んでいた角野亮伍の“逆輸入選手”に、土屋アリスター時生(前西宮ストークス)が入団する。外国籍選手はギャレット・スタツ(前群馬クレインサンダース)、そして後にファン・ブースターから“神様”と崇められる、ディージェイ・ニュービルが新たに加わった。そのニュービルはコロナ禍の影響で来日が遅れ、アンドリュー・ランダルと短期契約を結んだ。

 

船出を目前に、指揮官が大病を患ってチームを離脱する緊急事態が発生

新たな体制で船出を切らんとした矢先の8月末に、衝撃的な出来事が起こった。天日HCが、悪性リンパ腫に罹患したことが判明。長期の治療と療養が必要となり、チームから離脱することを余儀なくされたのだ。天日HCは療養中もリモートなどでチームに関与することになったが、現場の指揮権は竹野明倫アシスタントコーチがHC代行の肩書きで務めることになる。開幕を前にして指揮官が離れることになり、チームに少なからずの動揺が走った。

指揮官を欠き、エースと目される新外国籍選手は合流が遅れている。期待と不安が同居しての船出となったが、それは悪いほうに出てしまった。10月3日の開幕ゲームである広島ドラゴンフライズ戦こそ勝利したが、その後は勝利から見放される。ようやく来日したニュービルが10月17日の京都ハンナリーズで初出場して、いきなり34得点と大きなインパクトを放ったが、それでも勝利は叶わず4連敗。開幕から10戦を終えて4勝6敗と、苦しい立ち上がりだった。

思うように波に乗れないチームに、さらなる不運が降りかかった。10月10日にアウェーで行われた川崎ブレイブサンダース戦で負傷し、欠場が続いていた合田に左肩関節脱臼の診断が下り、長期離脱を余儀なくされる。前季に二度にわたって負傷した箇所の再々発。このシーズンにキャプテンを任され、再起を期していた矢先の不運だった。チームにとっても、シックスマンとして存在感を放っていた中心選手の離脱は、大きなダメージになった。

その後の10試合を5勝5敗で乗り切り、試合数をこなすうちにニュービルとチームのフィット感が高まってきた。それに加えて、このころからルーキーのドンリーがスターティングメンバーに定着。10月3日の開幕戦に交替で初出場を果たし、合計で11分プレーして無得点に終わったばかりか、5ファウルで退場する苦いデビュー戦から経験を重ね、彼の成長によってチームの底上げがなされた。

ようやく歯車が噛み合ったチームは、そこから加速。21~40試合目までの間は千葉ジェッツ、アルバルク東京の強豪勢からも白星をもぎ取り、14勝6敗と勝ち星を積み上げた。その間に12月に復帰を果たしながら、肩の状態が思うように上がらなかった合田が手術を受けるため、2月8日にインジュアリーリスト(IL)に登録。今季の復帰は絶望的となる。その直後には、大東文化大の高島紳司が特別指定選手として入団。1試合平均約20分に出場と、チームにとって貴重なピースになった。

 

天日HCの復帰戦で、まさかの悲劇 それを乗り越え、初のCS進出を果たす

そしてシーズン40試合目となる3月3日の信州ブレイブウォリアーズ戦で、ついに天日HCが現場復帰を果たす。長く現場を離れていたゆえ自らがチームの指揮を執ることはせず、竹野HC代行をサポートすると後方支援にまわる意向を示した。この時点で西地区4位にまで順位を上げ、CS出場が手の届くところにまできた。

そんな上げ潮ムードだったチームに、またも不運が襲いかかる。天日HCによってシックスマンとして起用され、覚醒を見せていた橋本が、あろうことか天日HCの復帰戦で右アキレス腱断裂の重症を負う。のちに全治8ヶ月と診断され、合田とともに今季の復帰は望めなくなった。

主力選手の離脱が相次いだに関わらず、チームの勢いは衰えなかった。だがシーズン終盤戦になって、またもコロナ感染が拡大。3月末から4月上旬にかけて、試合の中止が立て続けに発生する。その影響で終盤戦のホームゲーム3試合は、無観客での開催となった。

そんな状況下でもチームは勝ち続け、5月1日に初のCS進出が決定。5月9日のレギュラーシーズン最終戦こそ敗れたが、最後まで西地区2位の座を死守してCSクォーターファイナルズをホームで行うことが決まった。ただし、これも無観客での開催。初のCSに、コロナ禍が大きく水を差してくれた。

クォーターファイナルズの相手は、東地区3位の川崎。5月15日に、第1戦が行われた。無観客ゆえ場内に熱気は感じられず、CSに相応しい華やかな雰囲気はない。アリーナにはボールが弾む音、バスケットシューズのスキール音、そして選手やスタッフが発する声だけが静かに響く。ホーム会場ながらそんな雰囲気に違和感を拭えなかったのか、第1戦は終始相手に先行を許して75-95で敗れる。翌日の第2戦に勝ち、第3戦に持ち込むしか勝ち上がる術はなくなった。

その第2戦は先行を許しながらも、第2Qで28得点を奪い6点リードでゲームを折り返す。しかし後半に相手のディフェンスを崩せずロースコアに終わり、結果は73-84で敗戦。初のCS進出を果たした2020-21シーズンが、静粛に包まれて幕を降ろした。


 

天日HCが3季目の指揮を執った2021-22 ビッグネームの竹内譲次が加入

このシーズンは相手チーム以前に、とにかくケガとの戦いだった。開幕前の9月12日行われたプレシーズンゲームで中村が左足を負傷し、全治1ヶ月の診断。開幕には間に合わなくなった。合田がILから抹消されたのは朗報だったが、故障明けとあってコンディションは万全ではない。

緊急補強として開幕直前にケドリック・ストックマン・ジュニアを特別指定選手で獲得したが、12月20日に退団が発表されるまで4試合に出場、1試合平均出場は5.5分と、ガード陣の不安を解消するには至らなかった。

それでも前季にCS出場を果たした地力を発揮し、開幕から10試合を6勝4敗と勝ち越しで乗り切った。だが11月5日。思ってもいなかった不運が降りかかる。復帰を視界に捉え、リハビリ期間を終えて全体練習に参加したその日に、橋本が右アキレス腱を再び断裂してしまったのだ。本人がどれほど失意したかは想像すら及ばないが、今季の戦力として橋本の復帰を計算に入れていたチームにとっても、大きな衝撃だった。

その後も故障者の発生は止むことなく、12月1日の天皇杯4次ラウンドのA東京戦でエリスが右肩鎖関節を亜脱臼。ILに登録されることになり、直前にバンビシャス奈良との契約を解除したスペイン出身のビッグマン、デイビッド・ドブラスを獲得する。ドブちゃんの愛称で親しまれた男はシーズン閉幕まで在籍。出場43試合中36試合に先発起用され、1試合平均22.9分出場、同9.0得点と緊急事態を補う仕事をした。

12月21日には高島が前季に続いて、特別指定選手として加入。前季と比較して得点力の成長が目覚ましく、12月25日の川崎戦では4本の2P、5本の3Pをすべて決め、シュート成功率100%で23得点をあげて勝利に貢献。3月6日の島根戦では、それを上回る28得点をマークした。現役大学生ながら、チームの欠けたピースを埋めて余りある働きをした。さらに12月27日には大阪府高槻出身で、日本大3年次ながら関東大学選手権に貢献した飯尾文哉も、特別指定選手で加入した。

 

絶対的エースのニュービルまでもが離脱 チームに反撃する力は、もうなかった

フレッシュな力が加わる一方で、チームを襲う故障渦が止まらない。12月22日に練習中のケガでモーアが全治1ヶ月の診断を受けたと発表し、年が明けた1月にはかねてから右ヒザの不調を訴えていたハントも離脱。もはやチームは、野戦病院と化していた。

年内こそ12勝12敗の5割で乗り越えたが、残ったメンバーにも負担が押し寄せ、それは蓄積疲労となってチームを蝕んでいった。1月2日のA東京戦から、坂道を転げ落ちるように7連敗。3月9日に収容率100%での試合開催が認められ、アリーナに徐々に観客が戻ってきたが、チーム状態は上がらない。その後に3月23日の滋賀レイクスターズ(現レイクス)戦からの5連勝で持ち直すかに思えたが、大事なシーズン終盤戦にまたも故障者が続発する。

3月26日の富山グラウジーズ戦で青木が左肩を負傷。手術を受ける重症で、今季の復帰が絶望となった。さらにそれまで全試合にスターターで出場し、チームハイの1試合平均23.0得点をあげていたニュービルまでもが、4月6日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦でケガを負い、治療とリハビリのために帰国した。

絶対的エースまでも欠いて、もうチームに反撃する力は残されていなかった。ニュービルが負傷した試合から数えて、悪夢の12連敗。その間には木下までもが左ヒザに全治2ヶ月のケガを負い、最終盤にはアクティブロスターが8人と、リーグが規定する最低人数ぎりぎりにまでなった。

5月7・8日のシーズン最終節は、ホームでの開催。第1戦に勝利して連敗を12で止めたが、これが最後の勝利になってしまった。シーズンを通じては21勝36敗で、西地区11チーム中8位。地力はありながらも計算外の故障者多発に翻弄され、本領を発揮できぬままシーズンが終わってしまった。そしてシーズン終了からほどなくして、天日HCの退任が発表された。

(文/カワサキマサシ)