ディフェンスこそが、僕の生きる道
──#60 坂本聖芽
移籍1シーズン目ながら、今季の開幕戦にスターターで出場。前線から相手を激しく追い回し、攻撃に転じてはポイントガード(PG)としてスピードに乗ったドリブルで敵陣に切り込む。勝負どころでは、自らスコアも決めた。ニューフェイスである背番号60のプレーは、見る者に強いインパクトを与えた。そんな坂本聖芽がこだわるプレーはディフェンス。その原点は、大学時代にある。
「ディフェンスはバスケを始めたころから得意だったんですけど、高校のころまではけっこう得点も獲っていましたね。だけど東海大に進学して、バスケの名門校じゃないですか。僕より点を獲るのが上手い選手がたくさんいて、今のままのプレースタイルでは生き残れない。そう思って、ディフェンスにより力を入れて取り組むようになったんです」
当時からプロ選手になることは夢ではなく、明確な目標だった。そこに辿り着くためには、さらなるレベルアップが必要。そう実感した彼は、練習で自らを徹底的に追い込んできた。
「このラインまで走るというメニューだったら、その少し先まで全力で走る。スクワットを20回しなさいと言われれば、25回する。そんなふうにして、日常の練習から人より多い量をこなしてきました。そうして大学3年生のころから少しずつ試合に出してもらえるようになって、ある試合で僕のディフェンスで試合の流れを変えることができたんです。そこで完全に、振り切りましたね。僕はディフェンスで生きていくんだと」

大学3年次から名古屋ダイヤモンドドルフィンズに、特別指定選手として加入。卒業後はプロ契約に移行し、昨シーズンまで在籍した。
「特別指定選手のころは大学と同じで、ただガムシャラにプレーすることしかできなかったんです。だけど、それだけではプロの選手は止められない。あらかじめ相手の特徴や、状況によってどんなプレーをしてくるのかを研究しておく必要がある。ディフェンスで相手と対峙したら、そこには駆け引きがあるんです。とにかくプレッシャーをかければいいというものではなく、頭を使ってプレーしないとディフェンスは成功しない。そういったことを、身をもって知りましたね」
プロの舞台で経験を積み重ねるうちに着実に成長を遂げ、昨シーズンはキャリアハイの56試合に出場。さらなるステップアップを求めて、今シーズンから大阪エヴェッサに加わった。
「名古屋Dでは、たくさんのいい経験ができました。だけどいつからか、ここからさらにステップアップするには、新しい環境に飛び込んだほうがいいのではと考えるようになっていったんです。エヴェッサは昨シーズン対戦して、すごくハードにディフェンスを仕掛けてくるし、たとえ負けていても最後まで食らい付いてくる。本当に、嫌なチームだなと思っていました(笑)。そのエヴェッサからオファーをもらって、チームの一員になってあのバスケをプレーしたら、自分はもっと成長できる。そう確信して、移籍することにしたんです」

初めての移籍で、最初は少し緊張もした。しかし持ち前の屈託のない性格で、すぐにチームに溶け込んだ。チーム内では年少の部類で、先輩たちからも可愛がられている。まだ大阪に来て日は浅いが、暮しにも街にも馴染んできたという。
「中学の修学旅行で京都と奈良に来たことはありましたけど、大阪には試合の遠征で来るくらいでしたね。出身が群馬県なので、大阪にはホント縁がなかったです。だけど暮してみて、大阪はお店もたくさんあるので楽しいですね。自分の好きなブランドのショップがいくつもあるので、オフの日は時間があれば買い物に出かけたりします。そのときはやっぱり、服を見ることが多いかな。好きなスタイルはストリート系というか、そんな感じですね」

シーズンは、始まったばかり。坂本はコートの上で、ヴェッサーたちにどんな姿を見せたいと考えているのか。
「開幕の三遠ネオフェニックスさんはポイントガード(PG)が起点になる選手だったので、そこをいかに抑えるかに注力しました。試合では相手に少しでもボールを離させたり、時間をかけさせることがポイントだったので、それはある程度はできたかなと思っています。その一方で、まだまだやらないといけないことが出てきたとも感じました。試合ごとに出てくるそういった課題をひとつずつクリアしていって、成長していく姿を見せたいですね」
小さなステップアップを積み重ねていって、シーズンが進むごとに彼はどのように成長を遂げていくのだろうか。
「僕自身は、あまり自分の未来像とかはイメージしていないんですよ。このチームのために、自分ができることをしたい。個人成績で昨季を超えたいとの思いは多少ありますが、最優先するのはチームのために。今季のエヴェッサって正直なところ、超スーパーエースがいるというわけではない。だからこそ全員で頑張って、全員で勝ちをもぎ取るチーム。それはすごく、やりがいがあるんですよ。チームが勝つために、試合では僕が先頭を切ってディフェンスを仕掛けていきます!」
若きディフェンス・ファイターが、魂を込めた守りでチームに流れを呼び込む。
取材/文 カワサキマサシ
(2025.10.25・26 広島ドラゴンフライズ戦 ゲームデープログラム掲載)


























































