勝利のため、ヴェッサーを笑顔にするため
アンストッパブルな選手になって勝利に導く
──#5マット・ボンズ
チーム総得点の1/4を叩き出す
エヴェッサのエースプレーヤー
エヴェッサのエースプレーヤー
開幕から10試合を消化して、チームハイの1試合平均20.8得点をマーク。今シーズンもエヴェッサのエースは、#5マット・ボンズだ。ゴール下に切り込むドライブ、勝負どころで高確率で射貫く3Pなど得点パターンは多彩で、チーム総得点の実に1/4が彼から生み出されているのだ。在籍2シーズン目の今季も、チームは彼に得点源としての活躍を求めている。
「チームから求められている役割は、昨シーズンと比べてそれほど大きな変化はないね。僕は自分をマルチプレーヤーや、オールラウンダーといったタイプの選手だと思っているんだ。得点を獲るばかりではなくて、チームのトランジションを速くするのをリードしたり、ディフェンスでもチームに貢献できる。それ以外にもチームが勝つために必要なことは、なんでもやっていくよ」
今季のエヴェッサは外国籍選手を含むコアメンバーのほとんどが残留し、新加入は4人の日本人選手のみ。継続によるチームの熟成に強みを求めて、2025-26シーズンを戦っている。
「まさに、そうだね。昨季は多くの選手が新加入だったし、選手間のケミストリーを築くまでに、どうしても多少の時間が必要だった。今季に関しては、それがほとんど必要がない。昨季よりも前の位置から、スタートが切れている。そこはやはり、今季の僕らの強みだと思う。それに新加入のヤス(#4青木保憲)、カイセイ(#7高橋快成)、ヨシヤ(#8植松義也)、セイガ(#60)は、チームに新しい風を吹き込んでくれている。スターターだけではなく、ベンチメンバーも含めた全員がチームで戦うという意識が高いこともそう。昨季よりも、何段階もレベルが上のチームになっているよ」

昨季からの継続路線でチームの熟度が高まっていることが長所である一方、チームコンセプトと選手に変更がないということは、相手チームの研究が進む懸念もある。そう話を向けると、そんなことは大したことではないとばかりに手を左右に振り、彼はこう話を進めた。
「現段階で自分たちの共通理解は、しっかりと全員の頭のなかに入っている。相手がどうこうという以前に僕らがやるべきは、自分たちのバスケットボールが表現できる時間を、40分間のなかでできる限り長くすること。それが、いちばんの課題だと思う。もちろん相手チームも研究してきて、僕たちに大阪エヴェッサのバスケットボールをやらせないようにしてくる。そんなチームに勝つためには、やっぱりチームでプレーして、自分たちのやりたいことをやり続けないといけない。その点はシーズンを通じて、メンバー全員で頑張ってやっていこうと意思統一ができている」
日本でプレーするのは、今季が7シーズン目。年齢は今年の11月6日に、30歳になる。日本でのキャリアを重ね、年齢的にも日本人選手、外国籍選手問わずリーダーシップを発揮すべき時期に差し掛かってきたのではないだろうか。
「やろうと思えば、僕がリーダーシップを発揮することもできる。だけどこのチームにはジョージ(#15竹内譲次)、タツ(#35鈴木達也)とふたりの素晴らしいキャプテンがいるじゃないか。それにヤス、#20合田(怜)もチームをリードしている。これなら僕がリーダーになる必要はないし、出る幕がないよね(笑)。僕の役割としては、彼らをフォローすること。もちろん彼らになにかあれば、僕が代わってリーダーシップを取ることもするよ」

2019-20シーズンに佐賀バルーナーズに入団したのを皮切りに、エヴェッサが日本で通算5チーム目。彼自身はこれほど長く、日本でプレーすることになると思っていたのか。
「佐賀に入団して初めて日本に来て、この国の文化や自然、食べ物がすぐ気に入ったんだ。そのときから、できるだけ長く日本に居られたらなと思っていたよ。オフになってアメリカに帰ると、すぐに日本食が恋しくなるんだ。アメリカンフードは健康面を考えると、あまりヘルシーではないんだよね。とはいえそれを食べて育ってきたから、嫌いではないんだけど(笑)。ともかく日本はもう、僕の第二の故郷だといえるほど特別な国だよ」
かつては西宮(現神戸)ストークスに在籍し、関西で生活した経験がある。それでも大阪は、神戸や西宮とはまた違った刺激がある街だと暮しを楽しんでいる。
「九州エリアにも数年住んでいて、そこでの生活も楽しんでいたんだけど、こっちの関西エリアは九州とはまた違う楽しさがあるね。なんといっても、人がとても面白い(笑)。それに、美味しい食べ物もたくさんある。大阪は楽しいスポットがたくさんあって、ここでの生活はすごく気に入っているよ。お気に入りのカフェもできたし、街中なのにグラングリーン大阪やうつぼ公園といった、緑豊かな大きな公園があるのも素晴らしい。オフの日はリフレッシュするため、妻といっしょに外に出て自然を感じたりしているんだ」
チームが今季最初の目標とするチャンピオンシップ進出のために、マットの力は欠くことができない。エヴェッサが誇るエースプレーヤーは今季、コートの上でどんな姿を見せるというのか。

「とくにどのプレーかと問われると、答えるのが難しいね。ドリブルやパス、シュートといったオフェンス面もそうだし、ディフェンスもそう。すべてのプレーのレベルをさらに上げていって、アンストッパブル(相手が止められない)な選手になりたいと思っている。もちろんそうなれるように、日々の努力は欠かしていない。それを発揮して、みんなに見てもらえるのはコートの上。ゲームに出たらつねにハードワークして、情熱的にプレーしている姿を見てほしいね」
背番号5は情熱をほとばしらせて、相手ゴールにアタックする。チームの勝利のため、ヴェッサーを笑顔にするため。ただ、その一心で──。
取材/文 カワサキマサシ

























































