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大阪ひと筋でプロキャリアを重ねて10シーズン 苦難を乗り越えてきたMr.エヴェッサが抱くCSへの思い ──#20 合田怜




大阪学院大4年次の2016年に、当時NBL2の兵庫(現神戸)ストークスにアーリーエントリーで入団。同年秋のBリーグ開幕とともに大阪に移り、以来10シーズンにわたって大阪ひと筋でプロキャリアを重ねてきた。#20合田怜こそは、まさにMr.エヴェッサといえる存在だ。

「ルーキーでエヴェッサに入団したころはその場のことに一喜一憂して、長い先のことは見えていなくて、目の前のことだけに集中できていました。今考えたらめちゃくちゃいい時間というか、楽しかったですね。この10シーズンを振り返ると、地元のチームでこんなに長くプレーできて、これほど幸せなことはないと思っています」

新たなプロリーグの開幕を華やかに飾るべく、当時はチームラボとコラボレートしてアリーナで派手な場内演出を展開。現在のロスターで当時の舞洲のコートに立っていたのは、彼が唯一である。

「あのころの演出は今よりも派手で、これがプロかと思いましたね。bjリーグやNBLのことも知っていたので、自分が見てきたものとは違う世界が始まったなと。それをルーキーから感じれて、すごく幸せな立場でしたね」

ルーキーシーズンは55試合、2季目は58試合に出場と早くから主力選手の座をつかんだ。しかし、彼のキャリアを語るうえで目を逸らせないのが、幾度も続いたケガとの戦い。3季目の2019年に左肩脱臼を受傷したのに始まり、同個所の再発を何度も繰り返してしまう。悔しさに唇を噛みしめたこともあったが、コートから離れている時間にプラスを得ようと気持ちを切り替えた。すると今まで見えていなかったものが、見えるようになった。

「外から見る時間が長かったのでバスケットIQというか、考える力はその時期にすごくつきましたし、それを得たうえでの自分の役割を自覚することができました。そういう、プラスの部分はありましたね。だけどやっぱり、ケガをする前の身体には戻らないと僕は思っています。できるだけ元に近い状態の体には持っていきたいけど、一度手術してしまうと、それは簡単なことではない。そこの折り合いのつけ方は、すごく難しいですね」

昨シーズンも終盤に今度は右肩を脱臼。手術を受けた影響で今季の開幕戦には間に合わず、翌週のアウェイでの名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦が、彼にとってのシーズン開幕となった。

「手術した後の年は毎回、自分のなかで模索しながらなんですよ。現に復帰した今も自分としては全然、上手くいっていない時期ですが、まあそういうものやと思っています。ケガの経験だけは、無駄に多くありますから(笑)。今までできていたことを取り戻すのではなく、新しくなにかを見つけて、新しい自分に取り入れていく。今の自分ができることを100%やっていくのに集中できているから、今までの経験も辛いだけではなかったなと思います」

ここ数シーズンはよりディフェンスに注力してプレーしているが、本来の彼は得点力をあわせ持ったガードのプレーヤー。勝負どころで射貫いてくる3Pシュートは、チームにとって大きな武器になる。しかし今季は16試合出場で、通算6得点にとどまっている。

「(得点を)獲りに行きたいですし、その意識も頭のなかにあるのですが、シュートの感覚が戻りきれていなくて……。今までとは違う感覚が、自分のなかにずっとあるんです。得点を獲る感覚を、今シーズンの残り42試合で絶対に見つけないといけない。これが今の自分の課題だと、認識しています。とはいえどんな状態だったとしても、コートに立ったら、チームにとって必要なプレーをしなければいけないとも思っています」

 


これまでのエヴェッサはシーズンごとにメンバーが大きく替わるケースもあったが、今季は藤田弘輝ヘッドコーチ(HC)が続投し、主力選手もほぼ全員が残留。長くこのチームでプレーしてきた彼は、今季の自分たちの強みをこう感じている。

「手を抜く選手がいないのが、今季のエヴェッサの強みだと思います。どのチームの選手もプロだから手を抜くことはないとは思いますが、そのなかでもさらにひとつ上のレベルで手を抜かないことができる。今の僕らは、そんな選手たちの集まりなんです」

熱を高めて、さらに言葉を続ける。

「ちょっとやそっとのミスが出ても、相手のほうに勢いがあったとしても、今シーズンは気持ちが折れなくなりましたね。踏ん張れる力がついたし、自分たちがやっていることに自信を持って、それをやり続けると僕たちは決めている。今シーズンは昨季から継続してきた力が、本当の意味でついてきているなと感じています。どんなにしんどいゲームでも踏ん張れるし、どれほどタレントのある選手がいるチームとも戦えると思っています」

チームは前節の富山グラウジーズ戦で今季初の連勝を飾ったが、それまでの土日のゲームは1勝1敗で終えるケースが続いた。ここから上位を目指していくためには、連勝することが求められる。

「そうですね。踏ん張る力がついたと言いましたが、これまでは最後の最後で踏ん張り切れなかったこともありました。そこを、さらに詰めていかないといけない。どの試合でも100%の力を発揮して、1点差でもいいから勝利をもぎ取っていくことの積み重ねだと思うんです。藤田HC体制になって2シーズン目ということもあって、もっと詰めていけるところが多くある。そういう意味では、まだまだ伸びしろが残されているチームだと感じています」

シーズンの1/3弱を消化して、現在は8勝10敗で西地区8位。ここからの巻き返しに、エヴェッサひと筋の男は手応えを感じている。

「チャンスは充分にあると思っています。自分たちより勝率が高いチームとも、対等なゲームができていますし。実際に(11月12日の)琉球ゴールデンキングス戦も、最終的には負けてしまいましたが、一時は10点以上あった差を追い上げて延長戦にまで持ち込みましたしね。今季の僕らがまず目指しているのは、チャンピオンシップ(CS)出場。僕のキャリアのなかでも1回しか行っていないし、そこに行かなければチームとしては成功ではないと思う」

CS出場を果たすためにチーム力を高めることはもちろん、欠かせないもうひとつの大きな力があるという。

「CSに出るために僕らはもちろん100%の力で臨みますが、ヴェッサーのみなさんの力も必要です。琉球戦ではみなさんの熱量を、すごく感じました。あの試合のような熱で、引き続き僕らをブーストしてください!」

エヴェッサがCS出場を果たしたのは、2020-21シーズン。だが彼は、ケガによってベンチから見守るだけだった。Mr.エヴェッサはCSへの強い思いを胸に、今シーズンを戦い抜く。



取材/文 カワサキマサシ